資料のページへ都教委情報メールニュースへブログへホームへ


2006.7.8更新

「反日分子」発言の柏村議員
「君が代」問題でNHK番組を批判

  2004年、イラクでの人質事件について、「反日分子」などと暴言を吐いた自民党の柏村議員が、「日の丸・君が代」に関してNHK番組に政治介入する発言をしました。
東京都教育委員会の「日の丸・君が代」強制を取り上げた「クローズアップ現代」についても批判しています。
■NHKへの介入 憲法違反 自民議員の質問 研究者ら撤回要求(赤旗6/30)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-06-30/2006063004_01_0.html

■議員の質問は「政治介入」/NHK番組めぐり申し入れ
 (秋田魁新報・岩手日報・西日本新聞・神戸新聞・北海道新聞など6/29)

 http://www.sakigake.jp/servlet/SKNEWS.NewsPack.npnews?newsid=2006062901002969&genre=culture/entertainment
 http://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack.cgi?culture+CN2006062901002969_1
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/20060629/20060629_007.shtml
 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060629&j=0022&k=200606291190
・・・柏村議員は15日の総務委で、NHKが総合テレビで昨春放送した「クローズアップ現代」に触れ「国旗・国歌に偏見を持たせるような番組づくりをしている」と主張。公共放送には「国旗・国歌(の浸透)を助長するような責務があるんじゃないか」などと橋本元一NHK会長らに質問した。・・・

■【特報】 自民議員のNHK番組質問  どこまで許される?
     『クローズアップ現代』 『競馬中継』も批判     識者 「政治的威圧、撤回を」

※東京新聞 2006.6.30. 28面 【特報】。ネット上のソースなし。

■柏村武昭議員のNHK介入発言に抗議し、発言の撤回・訂正を求める申し入れ
 (→ここをクリックすると申入れ書までジャンプします

■柏村議員、イラクでの人質は「反日的分子」「反日活動家」と放言
 (→ここをクリックすると当時の報道・議事録などまでジャンプします

柏村武昭議員、「君が代」問題に関するNHK番組を批判(2006.6.15)

■国会会議録検索システム
 http://kokkai.ndl.go.jp/
 2006年6月15日/参議院/総務委員会/柏村武昭 で検索。
 164-参-総務委員会-29号 平成18年06月15日(4〜6ページ)

○柏村武昭君 自由民主党の柏村武昭でございます。おはようございます。
 本日は、今国会最後の総務委員会で質問の機会を与えていただきましてありがとうございました。
 私は、先日、NHK予算の質疑をさせてもらいまして、そのときNHKの皆さんの御説明は、現在不払は止まりつつある、そしてこれからはどんどんどんどん受信料は復活してきて、一年間に百億、二年間で二百億というふうなプランニングも聞いたわけでありますが、私はその根拠は何ですかという質問をしました。ところが、残念ながら、その後も不祥事は引きも切らず、とどめはやはり空出張問題ではなかったかと思います。その後、また自民党の政調部会で、会長、理事が出席になって私は質問をさせてもらいまして、いつもいつも謝るよりは、やはりここはしっかりと線を引く必要があるんじゃないかと、だから、地方、中央問わず、全番組の旅費の精算とか出演料とか癒着はないか徹底して調べる必要があるんじゃないかと提案をいたしました。
 ですから、私は今日は、橋本会長にお尋ねするんですが、今日この委員会の場において、もう十分内部調査も終わりまして、御安心ください、ガバナンスも強化、コンプライアンスも徹底されましてNHKの再生宣言をすることができますと、よって決算は皆さん方承認してもらいたいと胸を張っておっしゃることができるかどうか、イエスかノーかでお答えください。どうぞ。

○参考人(橋本元一君) イエスかノーかでなかなかお答えしにくい問題であります。
 ただ、再生宣言ということでございますと、私やはり不正根絶に向けて責務を持っております。こういうふうな問題につきましては、大変NHKそのものの根幹にかかわる問題でございますので、不正根絶に向けてあらゆる努力を惜しみなく行っていくと、任してくださいということを申し上げたいと思います。

○柏村武昭君 余り力強い答弁ではなかったわけでありますが。
 今日はせっかくの機会ですから、私が個人的に長年疑問に思って、どうも不明瞭だなと思うNHKの国歌・国旗に対する公式な見解といいますか、それを今日はきちんと聞いてみたいと思います。
 私は、以前からNHKの国旗・国歌の扱いに対して疑問といいますか、釈然としない思いがあったんですね。例えば、皆さんも恐らく気付いていらっしゃる方多いと思いますが、昔は放送終了のときに、日章旗が翻って君が代の、まあ演奏だけですけれども、その絵が必ず総合テレビは入っておりましたが、今全く見ることがありませんね。あれはもう完全にやめちゃったんでしょうかね。この辺のところは方針が変わったのかなと。私は、これは大変大事なことではないかと。日付が変わるときでも結構ですし、節目節目に毎日流すべきではないか。外国なんかは、僕は行きますけれども、外国は堂々と自分の国の国歌・国旗を流しております。しかし、NHKはどうも後退しているんじゃないかという感じがありますが、どなたでも結構です、短めにお答えください。

○参考人(原田豊彦君) お答えいたします。
 国旗・国歌の放送につきましては、現在総合テレビ、二十四時間切れ目なく放送しているということでございますので、放送設備の保守それから整備などのために夜間の放送休止あるいは減力放送を行う際に、これ原則月二回程度でございます、放送終了時と放送開始時に日の丸の映像と君が代の演奏を放送するということを基本にしております。教育テレビでは毎日放送終了時に放送をしております。それからラジオにつきましては、国歌を放送終了時それからあるいは夜間の放送休止の際に放送をしております。
 日付変更時に放送してはいかがかという御意見も承りましたけれども、日付をまたいで番組を放送するケース、これもよくございます。そういう意味で、放送終了時あるいは放送開始時の放送の節目で放送を実施するということがふさわしいと考えております。

○柏村武昭君 どっちにしても余り前進はしていない、後退しているという感じがします。
 ついこの前まで日本じゅうが熱狂したトリノ・オリンピックを覚えていらっしゃると思うんですが、荒川静香選手の演技には感動いたしました。見事な金メダルを取ったわけでありますが、荒川選手が金メダルを取ったときに、彼女は感激の余り日章旗を体に巻き付けてリンクの中をウイニングランをしたわけですね。そのときにNHKの見ていた人は、あれっ、突然VTRに切り替わったというふうなことで、恐らく抗議がたくさん来たと思うんですね。
 私はこれは意図的にやられたのかなと思っていろいろ調べてみたら、これは後で聞くと、どうせ説明されるから言いますけれども、国際放送に任しているんでスイッチングがそうなった、だから仕方がなかったんだと。民放は堂々と生で流しているわけですから、これはもう非常に対比がはっきりと出たわけですね。じゃ、VTRが流れたんなら、その後、ラジオみたいに、今リンク上では荒川選手が感動の余りウイニングランを日章旗を持ってやりましたという実況放送をしたってよかったんです。そういうこともしないで、これは国際放送に任していますからという。そのときに私は、これが初めてであれば、ああ、そうなのかと思ったんでしょうが、またやったかというふうな気持ちがあったんですね。
 私は三年前にこの総務委員会で質問をしました。日本ダービーの番組について質問をしたんですね。日本ダービーを見ておりまして、私、馬が好きですから必ず見ているんですね。そのとき、NHKの映像について質問をしております。
 ある有名なソプラノ歌手が君が代を独唱いたしました。そのとき、民間放送の各局は、翻々と翻る日の丸、あるいは一生懸命観客席で歌っている皆さんの顔、青空、そういったものを映しておりました。NHKはその君が代をバックに何を映していたかというと、何と馬のしりを映しておりました。これは私はびっくりしまして、すぐに決算委員会で質問をしました。そうすると、皆さんの答えは、帰って検討してお答えをいたします。次の日にいらっしゃいました。あれはたまたまそういう絵を撮っておりまして意図的なものではありません、委員の指摘は大変遺憾であります。遺憾なのは私であります。やっぱりこれは、ソプラノ歌手が堂々と君が代を歌っているんであれば、やっぱりどういう顔をして皆さんが一緒に観客席で歌っているか、日の丸が青空に翻る絵がどんなに美しいか、そういったことをやっぱり気にしなきゃいけないんじゃないですか。
 それで、私は次の年の日本ダービーも見ていました。何とこそくなことに、この開会式の、次の年は、君が代の斉唱を外して映しておりました。それをBGMに馬の調子はどうか、そういったことばかりやっておりました。どういう根性なのか、私はあきれ返りましたけれども。
 それだけじゃないんですね。去年の三月に放送されました「クローズアップ現代」、「国旗国歌で教師処分へ卒業式」。こういう番組では、卒業式で起立すべきかどうかに悩む教師の声を取り上げ、一方で強制する側の東京都教育委員会の役人にも見解を述べさせることで一応両論併記の形式を維持したんですが、最後に記者と司会者が問題点を確認するという内容だったんでありますが、この番組が放送された後に東京都教育委員会から橋本会長あてに抗議の申入れがありましたね。覚えていらっしゃいますね。
 これはどういうことかというと、やっぱり自分たちが思っていた取材と全然教育委員会、違っていたわけですね。結果として、強制をめぐっての都教育委員会と学校現場の教員との対立という印象を与える番組としたことについて抗議をしたわけですね。なぜ抗議されたのか。それは、番組の中で、国谷キャスターが都教委はなぜ強制してまで徹底を図ろうとしているんですかと繰り返し質問して、都教委の規制を強制と断じて、明らかに東京都の教育委員会が教員に国旗掲揚、国歌斉唱を強制していると印象付ける編集内容であったからだと私は思います。(発言する者あり)だから、そういうふうな考え方の人もいるんです。だから、ちょっと黙って聞いてくださいよ。

○委員長(世耕弘成君) 不規則発言はやめてください。

○柏村武昭君 つまり、これを僕は見ておりまして、つまり、公務員である教員が法規としての性質を有する学習指導要領に従わないという根本的な問題点は全く指摘せず、賛成している大多数の教員の声も全く伝えない。そうでしょう。そして、これはやっぱり国歌・国旗に対して偏見を持たせるような番組づくりをしていると指摘されても仕方がないんじゃありませんか。
 会長、副会長、放送法第三条の二を御存じですね。あえて言いましょう。「政治的に公平であること。」、「報道は事実をまげないですること。」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」と書かれているんですね。これに抵触するんじゃないんですか。日本はまだアメリカのようにフェアネスドクトリンを削除しておりません。ということは、公共放送であるNHKはこの公平の原則をしっかりと守るべき義務があるんじゃないんですか。
 自主自律をいつも強調されていらっしゃる永井副会長さんから、NHKの国歌・国旗に対する明確な御見解をどうぞ。

○参考人(永井多惠子君) 国旗・国歌については多くの国民が受け入れていること、これは世論調査などでも明らかでございます。その背景には、日本人としての長い歴史を持っておりますし、それから平成十一年にはもちろん国会の審議を経て法律にもなっております。NHKではその前に、講和条約が発効されて日本が国際社会に復帰した折、昭和二十七年でございますけれども、まずラジオで、ラジオの終了時に君が代を放送しております。それから順次、総合テレビ、教育テレビなどでも放送をいたしております。
 今いろいろ御指摘ございましたけれども、公共放送として、対立する意見については双方の意見をお出しするということで、公共放送として間違った放送をしているとは考えておりません。

○柏村武昭君 では、なぜ抗議されたんですか。なぜ都教委から抗議されたんでしょうか。私は見ていて、非常に偏った放送だと思いました。

○参考人(永井多惠子君) お答えいたします。
 都教委から抗議されたことは事実でございますが、その一方で、また東京都の指導に対しては現在裁判も行われておりますし、教育現場からの反応ということも私ども放送では取り上げております。その双方をお出しして、あとは視聴者の的確な判断におまちするというところではないかというふうに思っております。

○柏村武昭君 私は、今日は事実をずっと列挙して、NHKの国歌・国旗に対する考え方、そして今までやってきたことを皆さんにお知らせいたしました。これで私は、今副会長がおっしゃったようなもう公平にやっているという考え方は非常に納得できかねます。今日は、その私が今までもやもやっとしたものが払拭できるかと思ったら、全然できませんね、それは。やっぱり、国歌・国旗はもう法律までなっているわけですからね。法律までなってて、国の誇りですよ、旗も歌も。そうすると、やっぱりそれを助長するような責務があるんじゃないんでしょうかね、NHKは、公共放送としてはですよ。私は、皆様のNHKとして頑張るんであれば、そういうことも含めて細心の注意を図ってもらいたい。
 私は、NHKは、さっきも山本委員が言ったように、公共放送としてやっぱり必要な存在だと思っておりますし、チャンネルの削減も必要ないと思っております。イギリスのBBCなんかに比べたら全然もう格段にチャンネルも少ないと思いますが、要するに、チャンネルの数じゃなくて中身の問題だと思うんですね、僕は。中身が大事です。だから、こういう誤解を招くような番組づくりには細心の注意を払ってもらいたいとあえて要望したいと思います。つまり、NHKを見た人はみんな、あっ、これはNHKが言っているから中立公平なんだと思うわけですよ。中立公平を標榜しながらマインドコントロールするというのは一番ひきょうなやり方である、そう思います。
 だから、もう一回チェックをするべきじゃないですか、現場の人間も全部。私は三十数年キャスターをやっていた経験から申し上げておきます。だから、国歌・国旗の扱いが恣意的と取られることがないよう公共放送としての役割を果たしていただきたい。
 NHKの体質改善と自浄努力が伝わってこない今の段階で決算を承認することには大変逡巡しておりますが、今日は公共放送として日本国の国旗・国歌に敬意を払っていただきたいということをお願い申し上げ、最後に橋本会長の国旗・国歌に対する明確な御見解、私の今までの不安を払拭するような見解を聞いて、終わりたいと思います。どうぞ。

○参考人(橋本元一君) この国旗・国歌、これは日本を表すもの、代表するものとしてNHKとして現在放送に使用してございますけれども、今後も日本の代表ということで適切に対処してまいりたいと思います。

○柏村武昭君 終わります。
【このページの先頭へ戻る】

「柏村武昭議員のNHK介入発言に抗議し、発言の撤回・訂正を求める申し入れ」への賛同署名のお願い

2006年6月21日

 去る6月15日、自民党の柏村武昭議員は参議院総務委員会でのNHK決算に関する質問のなかで、NHKに対して国旗・国歌の放映を執拗に求め、また「日の丸・君が代」をめぐる東京都教育委員会と教育現場の対立を描いた「クローズアップ現代・国旗・国歌・卒業式で何が起きているのか」(2005年3月28日放送)を取り上げてNHKを「偏向」呼ばわりするなど、放送内容に立ち入った発言を繰り広げました。もともと、これらの放送内容はNHKが自主・自律の立場で決めるべき事柄で、政権与党をバックにしたこうした質問は、国会質問に名を借りたNHKへの政治介入であって、憲法が保障した表現の自由と放送法第3条に抵触する権限濫用行為といわざるをえません。このことは、去る3月30日、同じ参議院総務委員会で自民党の山本順三議員が、VAWW-NET裁判の東京高裁法廷でNHK側の主張と異なる証言をした永田浩三チーフ・プロデューサーに対して人事上の処分をNHK会長に迫ったことと軌を一にしており、NHKへの統制を強め、国策宣伝に動員していこうとする政府・与党の意図を露骨に示したものにほかなりません。これに対して、私たちは別紙のように柏村議員に厳重に抗議するとともに、発言の撤回ないしは訂正を申し入れます。またNHKに対しては、不当な政治介入に毅然として対処し、「国会で予算と事業計画の承認を得るにあたっても自主自律の態度を貫く」(3ヵ年計画、新放送ガイドライン)立場を堅持するよう、あわせて強く要請します。つきましては、この申し入れ書の趣旨に広く視聴者・市民の皆様から賛同署名をいただき、署名簿を添えて連名で申し入れを行いたいと存じます。緊急の取り組みで時間的余裕がありませんが、こうした政治介入を常態化させないためにも緊急に声を上げたいと思います。なにとぞご協力をよろしくお願い申し上げます。

呼びかけ人一同(名簿は「申し入れ書」の末尾に掲載しています。)
賛同署名の送付先 電子メールの場合:http://www.geocities.jp/hoso_katarukai/』(「広場」欄)
                     または、shiharaiteishi@yahoo.co.jp へ送信下さい。 
署名用紙の場合:048−873−3520 へFAXで用紙をお送り下さい。


2006年6月○日

参議院議員
柏村武昭 様

国会審議に名を借りた柏村武昭議員のNHKに対する政治介入発言に抗議し、発言の撤回・訂正を求める申し入れ書

 柏村議員は、さる6月15日に開かれた参議院総務委員会におけるNHK決算に関する質問のなかで、国旗・国歌に関するNHKの放映問題と東京都における国旗・国歌の強制をテーマにした「クローズアップ現代」(2005年3月28日放送)を取り上げ、NHK の放送内容に立ち入った発言を繰り広げました。こうした質問は、以下に説明するとおり、国会審議に名を借りたNHKに対する重大な政治介入です。これに対し、私たちは、別紙の賛同者名簿を添え、以下のとおり、柏村議員に厳重に抗議するとともに、発言の撤回ないしは訂正を申し入れます。この申し入れ書に対する貴職のご回答を、発言の撤回・訂正についての対応も含め、○月○日までに文書で後掲の住所まで郵送くださるよう要請します。

1.憲法、放送法に違反する国旗・国歌の放映の強要

国旗・国歌を放送番組編集の中でどう扱うかはNHKが公共放送の使命を踏まえて自主自律の立場で判断する問題です。この点は、NHKが国営放送でない以上、国旗・国歌が法制化されたからといって、いささかも変化するものではありません。
 にもかかわらず、柏村議員が質問の中で、トリノ・オリンピックや日本ダービーの放送場面などを例に挙げて、国旗・国歌の放映をNHKに強要する発言を行ったことは、表現の自由を定めた憲法第21条第1項(「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」)、ならびに放送番組編集の自由を定めた放送法第3条(「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」)に反する違法な言動であり、断じて許されません。直ちに該当部分の発言を撤回するよう要求します。

2.東京都教育委員会による国旗・国歌強制教育の現実をねじ曲げた言動

 柏村議員は質問の中で、昨年3月28日にNHK「クローズアップ現代」で放送された<国旗国歌・卒業式で何が起きているか>についてNHKが都教委から抗議を受けた問題を取り上げ、抗議を受けたのは「東京都の教育委員会が教員に国旗掲揚、国歌斉唱を強制していると印象付ける編集内容であったからだと私は思います」(参議院記録部、未定稿速記録より)と発言しました。このように発言されるということは、柏村議員が国旗・国歌に関する都教委の行政は強制ではないと強弁しようとされたものと受け取れますが、これこそ故意か無意識かは別にして、東京都の教育現場の実態に関する無知をさらけ出したものです。
 2006年5月26日現在で東京都では国歌斉唱時に起立しなかったことを理由に停職・戒告・減給等の処分を受けた教員は345人に上っています。また、本年3月16日の都議会で都の中村正彦教育長は国旗掲揚・国歌斉唱時に生徒が起立斉唱しない場合、その指導上の責任を教師に問うて研修命令を含めた処分の対象にすると明言しました。これは国旗・国歌を踏み絵にして内心の自由を侵犯する強制以外の何物でもありません。国会審議の場で柏村議員がこうした実態をねじ曲げた発言をしたことに厳重に抗議するとともに、この発言部分を訂正するよう要求します。

3.公共放送の使命に関する無理解と曲解

 柏村議員は上記の「クローズアップ現代」に関する質問の中で、放送法第3条の2で定められた「政治的に公平であること」、「報道は事実をまげないですること」、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を引き合いに出し、NHKにこれらの原則を守るよう迫っています。しかし、今回の柏村議員の質問内容に照らせば、以下で説明するとおり、柏村議員こそ、これらの原則の趣旨を正確に理解し、これらの原則の精神をわきまえるべき当事者であることが判明します。

 (1)「政治的に公平であること」について
 柏村議員は「クローズアップ現代」が都教委から抗議を受けたこと自体が問題であったかのような発言を繰り返しました。しかし、報道機関の取材源秘匿をめぐって、さる6月14日に言い渡された東京高裁判決を引くまでもなく、報道機関の使命は国か地方かを問わず、市民が政治に参加するにあたって有用な判断材料を提供し、市民の知る権利に奉仕する点にあります。報道機関がこの使命を果たすには、取材や番組制作にあたって、公権力の価値判断から自立した姿勢を維持すべきことは当然です。したがって、NHKが都教委から抗議を受けたことを以って、あたかも政治的に公平でない番組を放送したかのように言い立てる柏村議員の言動は、同議員が「公正、公平」の解釈は公権力の専権事項であるかのようにみなす前近代的な国家主義的公共観に染まっていることを反証するものです。

 (2)「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」について
 柏村議員は、質問の中で、「国歌・国旗はもう法律までなっているわけですからね。法律までなってて、国の誇りですよ、旗も、歌も。そうすると、やっぱりそれを助長するような責務があるんじゃないでしょうかね、NHKは、公共放送としてはですよ」と発言しています。こうした前提に立って、国旗・国歌をめぐって都教委と学校現場の対立の実態を伝えた番組の放送を「偏見を植え付けようとするもの」と非難しています。
 しかし、国旗・国歌については、法制化の時点でも世論は二分していました(『朝日新聞』が1999年6月27、28日に行った世論調査によれば、日の丸の法制化に賛成は 59%、君が代の法制化に賛成は47%、反対は45%)。法制化後も、『朝日新聞』が 2005年6月の東京都議選のときに行った世論調査では、君が代斉唱時に起立しなかったことを理由に教師を処分する都教委の方針に反対が61%で賛成28%の2倍強になっています。支持政党別でも柏村議員が所属する自民党支持層ですら賛成49%、反対41 %と賛否は接近しています。
 こうした世論の推移から見て、「クローズアップ現代」が都教委の方針に反対する学校現場の声を伝えたことは、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」という放送法第3条の2の原則に照らして当然のことであったといえます。これを「偏見」と決め付ける柏村議員の言動こそ、事実を曲げ、公正・公平の解釈を誤った「偏見」といわなければなりません。

4.特定の理事を名指しした露骨な政治的威圧

 柏村議員は質問のなかで、「自主自律をいつも強調されていらっしゃる永井副会長さんから、NHKの国歌・国旗に対する明確な御見解をどうぞ」と発言しました。こうした発言は、憲法・放送法が保障した言論報道機関NHKの自主自律の問題を特定の理事個人の見解と結び付けて論じようとするものです。国旗・国歌に関するNHKの見解を国家政策への同調を強要する文脈のもとで、特定の副会長を名指しして答弁を求めるのは特定の理事に対する政治的威圧と受け取られても致し方ありません。
 こうした発言が国会での質問に名を借りて行われたことは、NHKの番組編集に対する露骨な政治介入であるばかりでなく、NHKの経営に対する悪質な牽制・干渉でもあります。
私たちは以上のことに強く抗議するとともに、該当部分の発言の撤回を求めるものです。
以上



柏村発言への申し入れ書:呼びかけ人名簿
(五十音順:敬称略)

呼びかけ人代表(23名)
池田幹子(小弥(「君が代」処分を考える会〔東京〕)、岩崎 稔(東京外国語大学教員、「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」事務局)、岡本 厚(「世界」編集長)、片山むぎほ(「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会・事務局長)、桂 敬一(日本ジャーナリスト会議会員/立正大学文学部講師)、小滝一志(放送を語る会・事務局長)、近藤 徹(「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会・事務局長)、崔 善愛(ピアニスト)、東海林路得子(団体職員)、醍醐 聰(東京大学教員/NHK受信料支払い停止運動の会・共同代表)、田島泰彦(上智大学教員)、俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)、中野敏男(東京外国語大学教員、「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」事務局)、西野瑠美子(フリー・ジャーナリスト)、野中章弘(ジャーナリスト/「放送の公共性の<いま>を考える全国連絡協議会」世話人)、服部孝章(立教大学教員)、平松辰雄(「君が代」解雇裁判を共に進める会・代表)、福島博子(三鷹市民)、細井明美(NHK受信料支払い停止運動の会・共同代表)、松田 浩(ジャーナリズム研究者)、宮村 博(「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会・代表)、吉田俊実(東京工科大学教員、「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」事務局)、李 孝徳(東京外国語大学教員、『前夜』編集委員)

呼びかけ人(70名)
合澤清(現代史研究会)、青崎百合雄(へいわとふくしを見つめる会世話人)、新井 治、新井史子(「日の丸・君が代」強制反対・「嘱託不採用撤回裁判」原告)、石下直子、石丸 朗(会社員)、岩崎貞明(「放送レポート」編集長」)、宇田川順子、江尻美穂子(津田塾大学名誉教授/女性「九条の会」世話人)、遠藤良子、大畑豊(非暴力平和隊・日本)、大道万里子(編集者)、岡本棟守(茅ヶ崎9の日スタンディング)、岡山輝明、勝守真知子(「学校に自由の風を!」ネットワーク)、川島京子、岸田静枝、北村 肇(「週刊金曜日」編集長)、木村まり、洪美珍(市民)、金 信明(高校教員)、櫛田 稔(民放労連東海地連・元委員長・現在顧問)、くまがいマキ(劇作家)、倉本頼一(NHK問題京都連絡会事務局)、黒瀬勉(教員)、黒田貴史(学校に対する君が代斉唱、日の丸掲揚の強制に憂慮する会)、小島昌夫(元都立高校教員、元女子美術大学教授)、小林 裕、小林義明(マスコミ九条の会HP編集室)、古茂田宏(一橋大学教員)、小山ユウ子(東京の教育破壊を考える会)、近藤光男(被解雇者の会)、近藤義臣(群馬大学教員)、斎藤貴男(ジャーナリスト)、佐藤美和子(ピースリボン裁判原告)、杉尾健太郎(弁護士)、杉山百合子、鈴木加代子、高橋邦夫(映演労連委員長)、高橋峰子(埼玉県人/イラク派兵違憲訴訟の会・東京)、滝口優子、竹森真紀(学校現場に内心の自由を求め、「君が代」強制を憲法に問う裁判=北九州ココロ裁判原告)、田中よしお(文字を問い合わせ中)、谷森櫻子・谷森正之(性と子育てを考える会)、坪根信幸、東本久子(子どもと教科書全国ネット21常任運営委員)、中川賢俊、中山靖子、七尾寿子(NHK問題札幌連絡会)、西村恵子(学校に自由の風を!ネットワーク)、西村千津(NHK問題京都連絡会事務局)、宜保幸男(沖縄護憲・平和民主教育懇談会)、長谷川長昭(NHK問題京都連絡会事務局)、花房恵美子(NHK番組改ざんを考える市民の会)、林 香里(東京大学教員)、林 明雄、藤森洋子(府中市民)、渕田芳孝、古荘斗糸子(うちなんちゅの怒りとともに!三多摩市民の会)、古荘暉(日野市民)、星野直之(被処分者の会・共同代表)、丸山重威(関東学院大学教授)、皆川学(放送プロデューサー)、宮坂明史(「日の丸・君が代」強制反対・「嘱託不採用撤回裁判」原告代表)、山中 章(三重大学教員)、山田昭次(立教大学元教員、学校に対する君が代斉唱・日の丸掲揚の強制に憂慮する会共同代表)、湯山哲守(京都大学教員)、横田満男(小金井市民)、和田悌二(編集者)、渡辺 力 
【このページの先頭へ戻る】

柏村議員、イラクでの人質は「反日的分子」「反日活動家」と放言

 自民党の柏村武昭・参院議員(広島選挙区)といえば、2004年4月のイラクでの「人質事件」の際に、人質になった人たちを「反日的分子」と発言したことで有名です。
 ネット上に記事が残っていた朝日新聞(04.4.26)では、 <人質事件にかかった費用などについて、「人質の中には自衛隊のイラク派遣に公然と反対していた人もいるらしい。そんな反政府、反日的分子のために血税を用いることは強烈な違和感、不快感を持たざるを得ない」と発言。中国については、「刑務所の内にも外にも人権なんてものは恐らくないんでしょう。それに比べれば日本の刑務所は楽園だ」と語った。 >と報じられている。
 国会議事録を見たところ、「━━━分子」「━━活動家」と「反日的」と「反日」の部分が伏せ字に修正されていました。

■人質の邦人は「反日的分子」 柏村参院議員が相次ぎ放言 (朝日新聞2004年4月26日)
 http://www2.asahi.com/special/jieitai/TKY200404260246.html

■国会会議録検索システム
 http://kokkai.ndl.go.jp/
 2004年4月26日/参議院/決算委員会/柏村武昭 で検索。


159-参-決算委員会-10号 平成16年04月26日

○柏村武昭君 どうも皆さん、こんにちは。自由民主党の柏村武昭でございます。
 早速もう質問に入りますが、本日の決算審査は法務、警察関係ということでもありますので、先日発生いたしましたイラク人質事件について触れないわけにはまいりません。
 五人の人質の方々が帰国して既に一週間以上たつわけでありますが、その後、この事件は、人質とその御家族の方々に対するバッシングのあらしを招きまして、正に異例の展開となっておりますが、ここは再発防止のためにもやはり努めて冷静に考えるべきではないかと考えます。
 まず、小野大臣に伺いますが、今回のイラク人質事件解決のために警察庁は具体的にどのような対応をされたのか、また、今までのところ捜査はどの程度まで進んでいるのか。支障のない範囲で結構でございます。お聞かせ願います。

○国務大臣(小野清子君) 四月八日の邦人三名に対する人質事件の発生を受けまして、私も政府の在イラク邦人人質事件対策本部の一員といたしまして外務省等と協力をし、全力を挙げて取り組んでまいりましたが、まずは無事に被害者の邦人五人が、五名が解放されましたことに心から喜んでいるものでございます。
 警察庁の対策についてでございますけれども、警察庁におきましては、国際テロ緊急展開チーム、TRTと申しますけれども、その要員を最大時九名、その体制で派遣をいたしまして、人質の解放に向けて、ヨルダンの首都アンマンを中心に情報収集等を行うなど、現地緊急対策本部と一体となって活動してまいりました。
 また、この間、全国警察におきましては、国内におけるテロの未然防止を図るべく、情報収集、警戒警備を徹底するとともに、関係道県警察におきましては、被害家族者との連絡窓口を設定をいたしまして、敏速、迅速かつ的確に相談に応ずることのできる体制を構築してきたと承知をいたしております。
 さらに、邦人三人を人質にいたしました事件につきましては、国外において日本国民の生命に危険が及び、身体の自由が害され、かつ日本国の重大な利益を害するおそれがある事案に該当すると認められることから、四月十五日に、警察庁長官が本事案に対処するための警察の体制について、関連する警察、警視庁及び北海道警察におきまして、所要の体制の下、合同して調査を遂行するよう指示をしたところでございます。
 一般に、外国で発生いたしました犯人やあるいは主要な証拠が外国にある事件につきましては、現地の捜査機関が主体となって捜査を行うものでございますけれども、本件につきましては、事案の重大性にかんがみまして、我が国警察におきましても真相究明に向けて可能な限り努力していくよう警察庁を督励している所存でございます。

○柏村武昭君 今回の人質事件は、北朝鮮による拉致事件とは全く状況が異なりまして、政府の退避勧告があるにもかかわらず、それぞれの意思で危険な国に出掛けていって現地の武装勢力に捕まったと。これ自体明らかに反国家的で、武装勢力に対する利敵行為とも評価できますが、さらに、聞くところによれば、人質の中には自衛隊イラク派遣に公然と反対していた人もいるらしいと。もし仮にそうだとしたら、同じ日本国民ではあってもそんな反政府、━━━分子のために数十億円もの血税を用いることは強烈な違和感、不快感を持たざるを得ないと私は思います。
 また、問題はお金だけではありません。人質事件の解決のためには官邸以下、日本政府の人的、物的、双方の資源が集中的に投入されました。ただでさえ忙しい国会開会中に政府の機能、官邸の機能が妨害、寸断されたわけでございます。言ってみれば公務執行妨害的なところもあるわけでございます。しかも、事態によっては国際政治にも致命的な影響を与えた可能性もありまして、無事解決して良かった良かったで済ませることはできません。
 また、邦人保護は政府の当然の義務といって、政府にばかりこの義務を負わせようとする。まあ、あるテレビキャスターなんかはそう言っておりましたけれども、それこそ私は甘ったれではないかと思うんですが、人質事件に関しては言いたいことはほかにもたくさんありますが、決算委員会の場でもありますので、あと一点だけ伺います。
 在ペルーの日本大使館人質事件以後、在外邦人の救出体制についてはいろいろ議論されまして、対策も講じられてきましたが、今回の人質事件の教訓を踏まえて、改めて在外邦人保護について抜本的な対策を練る必要があるんではないかと思います。憲法の精神に抵触しない程度での危険地域への渡航禁止措置や━━活動家の一時出国制限など、いろいろあり得ると思いますが、そうした点については外務当局はどのような見解をお持ちなんでしょうか。

○政府参考人(鹿取克章君) お答えいたします。
 外務省としても、邦人保護との観点から、御指摘のとおり、どのようにして今回のような事件の再発を防止するかというのは極めて重要な問題であると考えております。今、渡航禁止措置、例えば法的な渡航禁止措置についてもいろいろ御議論が出ております。危険地域への渡航禁止措置については、渡航の自由との関係もあり、法的な面を含め様々な観点から慎重に検討していく必要があると考えております。
 私どもとしては、現在、やはり再発を防止する上で最も重要なことは、国民一人一人に安全の問題についての意識を一層高めていただくことであると考えています。イラクの治安情勢は予断を許さない状況にありまして、政府といたしましても、いかなる目的の渡航であろうと、テロ等の、テロ攻撃の危険を含むあらゆる不測の事態が排除されないと考えております。このような観点から、やはり渡航される方々におかれては、自らの安全については自ら責任を持つという安全意識の徹底を図っていただきたいと考えておりまして、政府としても、危険情報の周知や安全対策に係る助言、広報等、一層強化してまいりたいと考えております。
 また、政府としてはこれまでも退避勧告の危険情報を継続的に発出してまいりましたが、これからも情報収集・分析に努め、適時適切に情報発信をしてまいりたいと、このように考えております。

○柏村武昭君 それでは、本題の決算の話に移りたいと思いますが、まず初めはテロ対策について質問いたします。
 今年の三月にスペインで起きました大規模列車爆破事件や今回のイラク人質事件を受けて、日本国内でのテロの脅威も一段と高まってきました。二〇〇一年の九・一一同時多発テロ事件発生以後、政府は国内外のテロに備えた本格的な対策を講じてきたわけですが、警察庁の予算でも、昨年度からはテロ等緊急事態への対処体制の強化が予算の主要項目になり、十六年度には前年比一・五倍のおよそ三百三十九億円にまで増えました。警察全体の予算がおよそ二千六百億円程度ですから、テロ対策にめり張りを付けた警察庁の意気込みが数字からも伝わってきます。
 そこで、警察当局に伺いますが、平成十四年度以降の警戒警備の強化などテロ対策の主な内容、そしてスペイン列車爆破テロ事件以後にテロ対策を強化した点があれば御説明をお願いします。

○政府参考人(瀬川勝久君) 警察におきましては、御質問にもございました米国同時多発テロ事件以降、入国管理局との連携による水際対策の強化、また国内外における情報収集とテロリストの発見、検挙、そして我が国重要施設や米国関連施設など全体で約六百五十か所に対する恒常的な警戒警備の実施などの施策を講じてきているところであります。
 まず、お尋ねの平成十四年度以降のテロ対策の主な内容でございますが、昨今のこういった厳しいテロ情勢を踏まえまして、NBCテロや銃器等を使用したテロへの対処能力の強化を図るため、NBCテロ対応専門部隊の装備資機材を整備をいたしましたほか、平成十四年四月、銃器対策部隊にサブマシンガン約千四百丁を新たに配備したところであります。また、ハイジャック、重要施設占拠事案等の重大テロ事案に対処するため、特殊部隊のSATにつきましても装備資機材等の充実強化に努めてきたところであります。
 さらに、警視庁におきましては、平成十四年四月に官邸警備、総理官邸警備の専門部隊であります総理大臣官邸警備隊を新設をいたしまして、官邸に対する警戒警備の万全を期しているところでございます。
 次に、お尋ねのスペイン列車爆破テロ事件以降、強化したテロ対策についてでございますが、警察といたしましては、先ほど申し上げました警戒強化の中で、新幹線や地下鉄等の公共交通機関のテロ対策としまして、これまでも鉄道事業者などと緊密に連携をいたしまして警戒警備に努めてきたところであります。
 御指摘のスペインの事件の発生を踏まえまして、鉄道事業者に対し自主警備の更なる強化を要請するとともに、警備犬を活用した駅構内の巡回の強化、積極的な職務質問や列車警乗、沿線警戒の強化に加えまして、不審物の発見を鉄道利用者に呼び掛けることなどを内容とする通達を発出し、都道府県警察に指示をしたところでございます。
 また、本日午前中には、永田町の地下鉄駅構内におきましてNBCテロが発生したという想定で訓練を実施をし、国家公安委員長にも視察をいただいたところでございます。
 いずれにいたしましても、警察におきましては、こうした国内外の諸情勢、依然として厳しいという認識をしておりまして、引き続き装備資機材の充実強化に努めるとともに、所要の警戒警備措置を講じまして、国内におけるテロの未然防止に万全を期してまいる所存であります。

○柏村武昭君 現実的な話をしますが、テロリストやテロ組織から三日後に新幹線を爆破するとか首都圏の水道に毒物を混入するといったそういう予告があった場合、政府は具体的にどう対応するんでしょうか。危機管理の手順は果たしてあるんでしょうか。
 三月のスペイン列車爆破テロ事件の直後に行われた総選挙では、野党勢力が勝利して政権が転覆する事態に陥りまして、これにはアルカイダの連中が大いに味をしめたともうわさをされております。日本でも、この夏、七月に参議院選挙がありますから、テロの危機はまんざら荒唐無稽でもないような感じもいたします。
 ですから、公安警察当局には、予告テロに対する緊急対応手順や国民への緊急広報体制などについて、今のうちからしっかりと研究、準備を進めて、首都防衛に備えていただきたいと思います。
 さて、テロ対策の基本というものは、正確で有効な情報を迅速に収集、分析し、それらをいかに大胆かつ効果的に実施するかということに尽きるかと思います。
 公安調査庁では、国際テロ対策予算として、十四年度当初予算では五百万円が計上されまして、十六年度にはこれが四千九百万円にまで増額されましたが、私は思うんですが、CIAとまではいかなくても、もう少し予算が欲しいなと思うんですね。
 それから、予算の問題だけではなくて、調査権限の問題もあります。
 今の公安調査官には、調査に当たって何の権限もありません。外国の情報機関には令状なしに予防拘禁までできる例もあるそうですが、ある程度の調査権限を与えなければ、価値のある情報を集めることはなかなか難しいはずです。入管職員にも多少の権限があるはずです、権限がありますから、公安調査官には少なくとも麻薬Gメン並みの権限は与えられるべきであり、破防法の改正が直ちに必要だと思います。
 また、公安調査庁だけでテロ情報を集めているものでもない。やはり、警察や防衛当局といった関係省庁との連携が何よりも重要であります。事、テロ対策に関していえば、縦割りの弊害によるささいな連携ミスが国の命取りに直結いたします。
 そこで、公安調査庁からは、調査権限の制限からくる情報収集上の不都合と今後の破防法改正について、また関係省庁間でのテロ情報のやり取りの実際について簡単に伺いたいと思います。

○政府参考人(大泉隆史君) お答え申し上げます。
 公安調査庁では、先生御指摘のように、従来から人を介した情報収集を中心とする任意調査の手法によりまして各種の情報の収集に努めておりますが、近年、国際的テロ行為が多発している状況を踏まえ、これらテロなどの有効な防止策の在り方につきまして、公安調査官の調査をいかに強化するかということを含め、諸外国の法制度などを参考にしつつ、法整備の要否の問題も視野に入れて鋭意検討を行っているところでございます。
 委員御指摘の破壊活動防止法の改正につきましては、同法に基づく規制が国際テロ団体に対して有効に機能するかという問題もございますので、新たな法整備の要否の問題も視野に入れて検討しているところでございます。
 また、関係省庁間の情報の交換につきましては、公安調査庁においては、重要な情報等を入手した場合には、速やかに内閣情報官始め関係諸機関に適宜適切に提供するなどして情報の共有に努めておるところでございます。

○柏村武昭君 公安調査庁の皆さんも、やはり国民の生命を守るために昼夜を問わず必死で危険を顧みず情報収集活動をしているわけであります。その皆さんが、ピストルも持ってもいない、それから逮捕権もないということでは、ちょっと私は問題ではないかと。それ相応の防備、権限が絶対に必要ではないかと。これからの課題として考えてもらいたいと思いますが。
 さて、テロ情報の収集に成功しても、それが専門家によって正確に分析されなければ効果的な対策作りに生かせません。
 そこで、情報収集の次の段階、情報の分析が重要となるわけです。その点、我が国には、アメリカのCIAや英国のMI6、イスラエルのモサドのような特殊な情報機関がありません。しかし、国際テロ組織のような見えない敵に対するには、もっと組織的に情報分析を行う本格的な体制を備えておくことが必要ではないかと思います。そして、情報分析の専門家を多数養成すると同時に、将来的には、米国の国土安全保障省のような、緊急危機管理のための統合的な組織の創設も必要ではないでしょうか。
 ここで内閣官房内調に伺うんですが、我が国のテロ情報の分析体制は現在どのようになっているんでしょうか、端的に御説明ください。

○政府参考人(貞岡義幸君) 御説明申し上げます。
 政府の情報収集・分析体制につきましては、我が国内外におきまして、防衛、外交、治安等の情報を担当する関係省庁が内閣の下に緊密に連携を保ちつつ情報収集を行い、収集された情報のうち必要なものにつきましては内閣情報官の下に集約され、総合的な分析を行っているところであります。
 このように分析された情報のうち重要なものにつきましては、直ちに官邸に報告され、その指示を受け、必要な措置が講じられているところであります。
 今後とも、情報の重要性にかんがみ、柏村先生の御指摘も踏まえ、一層、情報の収集、分析の機能を充実強化してまいりたいと考えております。

○柏村武昭君 続いて、情報の保護、つまり、外国のスパイから国家の重要機密、その情報をいかに守っていくかという視点から質問したいと思いますが、日本は、皆さん御承知のように、米ソ冷戦の当時から世界ナンバーワンのスパイ天国として有名でございます。本当にスパイが左うちわで活動できるという。今、世界からどのように言われているか定かではありませんが、とにかくスパイにとっては有り難い国でした。政府の批判も自由ですし、何とも気楽な国であります。
 そこで、提案も兼ねてあえて質問しますが、二十一世紀にふさわしい規律として、新たにスパイ防止法などもそろそろ作るべきだと考えますが、小野大臣、御見解、いかがですか。

○国務大臣(小野清子君) 警察におきましては、これまであらゆる法令を駆使いたしまして、いわゆるスパイ事件の取締りに努めてきているところでございますが、その結果、戦後、およそ七十件を検挙しているものと承知をいたしております。
 他方、スパイ防止法の制定の必要性につきましては、国民の基本的権利にかかわる問題であり、各般の御意見があることから、国民の十分な理解が得られることが望ましく、広く国会等の場で議論されることが必要であると、そのように思われております。
 そうした議論が行われる際には、その実効性を担保するためにどのような仕組みが必要なのか、第一線で取締りに当たる警察の立場から意見を申し上げていくことも必要であると、そのように考えております。

○柏村武昭君 それでは次に、治安対策の話題に移りたいと思いますが、平成の時代に入りまして、治安の低下が叫ばれて久しいですね。
 自民党では、去年の夏に治安対策強化小委員会で緊急提言をまとめまして、十六年度予算に生かしておりますが、最近、特に気になるのは、来日外国人による犯罪が増えてきていることであります。これは皆さんよく御承知のとおりです。
 現在、我が国に不法滞在する外国人の数はおよそ二十二万人強で、未確認分も含めると更に三万人程度増えるらしいんですが、こうした不法滞在者はいずれ犯罪に走る可能性が極めて高く、したがって、その数を減らすことが外国人犯罪を減らすための第一歩です。
 そもそも、日本の入管政策は私は甘いと思います。アメリカでは、例えばハワイなんかで学生ビザで皿洗いなどアルバイトなんかやったら、即刻強制送還、強制退去であります。これが世界の常識だと私は思います。犯歴者の入国禁止や不法就労それ自体の刑罰化も今すぐに検討すべきではないでしょうか。
 そこで法務大臣に伺いますが、我が国に不法に滞在している外国人の数や国籍等の実情、彼らが流入するのを防ぐための水際対策の現状について簡単に御説明をお願いします。

○国務大臣(野沢太三君) 平成十六年一月一日現在の不法残留者数は約二十二万人でありまして、韓国、中国、フィリピン、タイの順になっております。これは最高の数字では二十九万人まで行ったことがございますが、逐次減らしてはおりますが、今まだ、委員御指摘のとおり、高水準になっております。また、このほか、密航等による不法入国者がおよそ三万人と推定されまして、我が国の不法滞在者数は約二十五万人と推測されております。
 我が国社会の治安対策上、外国人犯罪の温床となっていると指摘されています不法滞在者を減少させることが喫緊の課題となっておりますが、不法就労等を目的とする外国人を水際で排除することは極めて重要であると認識しております。
 法務省といたしましては、全国の空、海の港における偽変造文書鑑識体制を充実させまして、的確な上陸審査に努めておるところでございます。今後とも関係省庁との連携の強化や偽変造文書対策の強化に努めまして、厳格な水際対策を実施してまいりたいと思います。

○柏村武昭君 去年の福岡県で発生した中国人留学生らによる一家皆殺し事件、これは皆さんも本当によく御存じでありますが、余りにも残酷で、もう二度と思い出したくないほどですが、来日外国人犯罪ではとりわけ中国人によるものの比率が高く、中国人対策をもって外国人犯罪対策は終わると言っても過言ではないと思います。一体、彼ら中国人たちの目的は何なんでしょうか。犯罪目的で来日する中国人もかなり多いと予想されますが、ちなみに去年一年間の外国人犯罪はおよそ四万件で、検挙人員はおよそ二万人で、そのうち中国人の割合はおよそ九千人であります。これは全体のおよそ四五%ですから、中国人犯罪対策にうまく成功すれば外国人犯罪は一挙に半減ということにもなります。
 法務省の入管では不審外国人メール通報制度を作ったそうですが、大変良い制度ですね。これを人権無視だの差別だのと言って批判する勢力がいますが、国民の生命と財産をもっと大切にした方がよいと思います。
 そこで法務当局に伺いますが、今大臣がおっしゃった水際対策も大事でありますが、やっぱり外国人犯罪を減らすために、外国人の入国を厳重に管理すること、そして今の不法滞在の人々をいかに減らすかということにもやっぱり大事なことではないかと思うんで、この二点に関する今の取り組み方、どのような取組をされているか教えてください。

○政府参考人(増田暢也君) 外国人犯罪の温床となっていると指摘されております不法滞在者を確実に削減するためには、問題のある外国人を日本には来させない、また、来ても入国はさせない、また、今いる不法滞在者はこれ以上いさせないと、この三本の柱が必要であると認識しておりまして、法務省としては、昨年十二月の犯罪対策閣僚会議における決定を踏まえまして、不法滞在者を今後五年間で半減するための各種の施策を現在講じているところでございます。
 また、昨年十月には、東京都などとともに首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言を発表するなどいたしまして、強力に不法滞在者対策を推進していくこととしております。具体的には、関係諸機関との連携を強化して、出入国審査リスト、いわゆるブラックリストの充実に努めながら、全国の国際定期便が就航している空海港に高性能の偽変造文書鑑識機を配備するなどにより、一方では厳格な上陸審査を実施しておりますが、さらに国内においては、留学であるとかあるいは就学、日本人の配偶者等、正規の滞在を偽装するのによく用いられる在留資格、こういったもので入ってくる人を防止するために実態調査を強化しております。
 また、お尋ねの摘発については、全国的に計画的かつ継続的な摘発の強力な実施を展開しつつあるところでございます。
 その他、法整備であるとか、さらに、国際的な協力体制の構築、広報啓発活動の推進など、総合的な不法滞在者対策の強化に努めているところでございます。

○柏村武昭君 各省庁がこの不法滞在の外国人に関する、やっぱり各省庁全部まとめてみますと十二、三あるんじゃないかと思うんですが、これが縦割りでやっていると全然やっぱり意味がないと思うんですね。横に一並びにして、どこかの司令塔がきちんと指令を出すと。今二十二万が五年間で半減にしようという計画があるらしいんですが、私はもう一年で半減ぐらいにしてもらいたい、そういう取組方をしてもらいたいと思うわけでありますが。
 続きましては、外国人犯罪の大部分を占める中国人犯罪、その対策についてはどのように取り組んでいらっしゃるんでしょうか、警察当局から端的に御説明をお願いします。

○政府参考人(栗本英雄君) 委員御指摘の、ますます悪化しております来日外国人犯罪対策ということで、まず、中国人の問題もそこに入っておると思いますので、その面では警察としての取締りの体制を整備を図るとともに、先ほど入管局長からもお話がございましたが、警察としても、入国管理局と合同摘発を実施するなど、国内関係機関と緊密に連携を図りながら取締りの強化に努めていきたいと考えているところでございますし、また、委員御指摘の中国との関係におきましては、何よりも中国治安当局との連携強化が極めて重要であると考えております。そのような観点に立ちまして、中国の治安当局とは、平成十年の国家公安委員長の訪中を始めとした閣僚レベルでの交流を進めるとともに、これを受けまして実務レベルでの協議を重ね、情報交換の緊密化、捜査協力の強化について合意しているところでございまして、今後とも、日中治安当局の協力関係をより一層緊密にしてまいりたいと考えているところでございます。
 さらには、昨年の十一月に中国公安部から在京の中国大使館に派遣をされました警察連絡員との連携を密にするなど、中国捜査機関との捜査協力の一層の推進にも努めてまいりたいと考えているところでございます。

○柏村武昭君 外国人による犯罪を誘発するそういう事情は、実は我が国の側にあるのかもしれません。
 三年前に、法務委員会の視察で私は名古屋の拘置所、刑務所、この辺を回ったんですが、入管の収容施設にも行って驚いたのは、そこに入っている、収容されている外国人の諸君が実に元気が良くて明るくて楽しそうなんですね。連中には罪を償っているという印象を全く受けなかった。
 これはどうしてかなと思ってずっと見たんですが、まあ日本の刑務所に入りゃ御飯は全部ただだし、夏は涼しく冬は暖かく、しかも、虫歯にでもなったらただで歯医者は治してもらえる。日本の収容所、刑務所は正に連中にとっては楽園ではないかと。
 しかも、黒板に何か書いてあったんですね。それを見たら、この国のだれは牛の肉は食べないとかこの国のだれは豚の肉は食べない、結構黒板に書いてあるんですね。これは何なんですかと言ったら、国のやっぱりルールに従って彼らには肉をこういうふうに区別していますと。これはおかしいですよね。
 これは、受刑者のそれは人権というのは、それは確かに普通の人たちの人権とは全く同じじゃないと僕は思ったんですが、それ相応の制限を受けることは当然で、これは最高裁でも認めております。だからこれを、法務省は非常にぜいたくというか、あなたの国は豚を食わないから、はい、豚を出しません、牛を食わないから牛を出しません、これをやっていらっしゃるわけで、じゃ、私がもし捕まってニンジンが嫌いだと言ったらニンジンは出さないんですかね。これはちょっと聞いてみたいですね、真剣に。宗教上の理由と言えばいいんですかね、もう本当の話。宗教上の理由と言えば通るんだったら宗教上の理由に言いますよ、私は。
 つまり、外国人に対して過度に配慮したそういう処遇は即刻日本人並みに改めるべきではないかと思います。その点について、担当の矯正局長に伺いたいんですが、どうでしょう。

○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。
 外国人受刑者に対する処遇は、原則として日本人に対する処遇と同じでございます。ただ、食事等、一定の場合におきましては、その宗教上の戒律、習慣等を配慮した処遇が行われることはございますけれども、外国人に過度に配慮した処遇は行っているものではないと認識しております。
 一般に外国人受刑者は言語、宗教等に起因しました受刑生活上の困難がありますので、一九八五年に我が国も参加いたしました犯罪防止及び犯罪者処遇に関する国際連合会議において採択されました外国人被拘禁者の処遇に関する勧告におきましても、外国人受刑者の宗教上の戒律及び習慣は尊重されなければならないとされているところでございまして、外国人受刑者の受刑生活上の困難を緩和し、円滑に収容生活を送らせるために宗教等に配慮した処遇を実施しているものでございます。
 なお、外国人受刑者につきましては、宗教が生活の重要な部分となっている場合も多く、宗教上の戒律等に配慮しない処遇により生じることが予想される様々な問題を考慮いたしますと、施設の管理運営上の観点からも宗教等に一定の配慮をした処遇が必要と考えているところであります。御理解を賜りたいと存じます。
 以上です。

○柏村武昭君 まあそうでしょうが、国民の共感が得られるかどうかということなんでしょうね。
 宗教上の慣習でキャビアしか食べちゃいけないと言ったらやっぱりキャビアしかやらないんですかね。そういうふうになっちゃいますわね。もう本当に、私の国はステーキしか食べちゃいけない、そういう習慣になっています、じゃステーキをずっと出すわけですか。そこら辺のどっかで線を引かなきゃいけない。悪いことをしたんだから、そのペナルティーは当然しかるべきじゃないですか。我慢して豚肉食べなさい、牛肉を食べなさいというのは当然じゃないかと思います。それが嫌なら悪いことをしなきゃいいんです。というふうに私は思いますが。
 さて、治安の悪化といっても、それは単に犯罪の発生数の増加といった量的なことから、犯罪の凶悪化とか新規の犯罪の増加といった質的なことまでいろいろ言われます。しかし、漠然と治安の悪化と言ってみても始まりません。治安の悪化を言うんであれば、具体的にどこでどういう犯罪がどれぐらい増えているかしっかり把握するのが先決でありますが、そこで思うんですが、犯罪発生件数は増加する一方で、強盗や殺人などの凶悪事件の検挙、この検挙率は依然、これが意外と高水準にあるんですね。
 平成十五年調べてみたら、殺人の検挙率は九四・一%、そういう立派な数字、実績があるんだったら、国民に対してこれはもっと積極的にアピールしていいんじゃないかと僕は思うんですが、そうすると御婦人方はもとより、子供やおじいちゃま、おばあちゃまも少しは安心なさるんじゃないかと思います。治安対策は暮らしの安全を守るだけではなくて、暮らしの安心も守るべきではないか。
 そこで、この際ですから小野大臣に要望しますが、警察は治安や生活安全分野の情報、特に凶悪犯罪の検挙率は依然高いということなどをもっと分かりやすく国民にアピールしてください、遠慮しないで。そして、犯罪被害から身を守るための防止対策などについても国民に親切に教えていただきたいと思います。
 さあ、おしまいですが、社会的弱者に対する犯罪の防止策について伺います。
 ここで社会的弱者というのは主に高齢者や児童のことを指すんですが、最近、こうした弱者の人たちが犯罪被害に遭うことが増えているようです。高齢化の影響で高齢者が増えたことも影響していると思うんですが、内では家族からの虐待に遭い、外ではやはり外国人などのかっ払いや強盗、ひいては殺人などの被害に遭っている。また、深刻な児童虐待のケースでは、まだ生後間もない乳児が傷付けられる例も多発しております。全く困ったものです。警察としても、こうした問題には受け身ではなくて、むしろ積極的に防犯、救護活動を行ってもらいたいとお願いする次第でございます。
 そこで、警察当局に伺いますが、高齢者や児童に対する犯罪被害を防止するために、最近ではどのような取組をされているんでしょうか、簡単に御説明をお願いします。

○政府参考人(伊藤哲朗君) 今御指摘のように、近年、高齢者や子供たちが被害に遭います犯罪というものが増えております。
 高齢者でいいますと、ひったくりでありますとか、あるいはおれおれ詐欺等の犯罪が増加しておりますし、子供の対象とした略取誘拐事件等の犯罪も多発しておるということで、高齢者や子供を取り巻く環境というものが大変厳しくなっているということは事実であろうかと思います。
 このため、警察におきましては、関係機関、団体との連携の下に、高齢者や子供を犯罪から守るためのいろいろな対策を進めているところであります。
 具体的に申しますと、まず高齢者についてでございますけれども、高齢者を犯罪から守るための取組としましては、行政機関あるいは防犯協会、ボランティア団体などと連携をしまして、高齢者を対象とした防犯教室といったものを開催しております。また、地域の犯罪の発生状況につきましてはミニ広報紙などによります広報啓発活動なども行っておりますし、さらには、独り暮らしのお年寄りを訪問しての防犯指導といったものが地域の警察官によって行われております。特にまた、最近急増しておりますおれおれ詐欺につきましては、高齢者の被害が大変多いということもございまして、関係機関、団体と連携しながら、高齢者世帯を中心とした被害防止の広報啓発活動や、被害を認知したときに金融機関に対しまして当該、振り込めと言ってきたような口座の凍結依頼を行うなど、被害防止に努めているところであります。
 一方、子供に対しての被害防止でございますけれども、これは教育委員会あるいは学校そしてPTA、さらには地域の防犯関係団体あるいは住民などと連携をしまして、警察では、例えば通学路や公園などの警ら・警戒活動、さらにはこうした団体との合同パトロールなども実施しております。
 さらに、子供を対象とする犯罪が発生したようなときには迅速に情報を提供するということが大事でございますので、こうした情報をファクスで提供したり、あるいは最近こうした犯罪が多いということをミニ広報紙などで迅速に提供しているということもありますし、学校におきましては、防犯教室あるいは防犯訓練などを実施して子供たちにそうした意識を植え付けるようにしているところであります。さらには、通学路というものがやはり子供たちが事件に遭うということもございますので、そうしたところに子ども緊急通報装置の整備であるとか、あるいは緊急地域雇用創出特別交付金事業を活用しまして警備会社などに委託して、学校周辺あるいは通学路のパトロールなども推進しているところであります。
 また、児童虐待のお話もございましたけれども、こうした問題につきましては、児童相談所などの関係機関とも連携を取りながら、その防止に努めているところであります。
 高齢者や子供を犯罪被害から守るということは、関係機関、自治体、地域社会とも共同して取り組むべき課題であると考えておりますので、警察としましても、こうした機関との一層の連携強化を図るように努めてまいりたいと考えているところでございます。

○柏村武昭君 児童や高齢者の保護と福祉は厚生労働省の管轄でありますが、警察の皆さんともうまく連携して、同じような悲劇が何度も起こらないようにしっかりやっていただきたいと思います。
 おしまいに、国民の皆さんから預かった大切な税金をいかに公平に配分し活用していくか、これが政治家に託された大事な役割の一つであります。予算の使い道のチェックはもちろん、筋の通った政策を実現するための建設的な提言も大切だと思っております。私からの指摘を当局はしっかり受け止めていただくよう強く要望しながら、質問を終わります。
 ありがとうございました。
【このページの先頭へ戻る】
inserted by FC2 system