2000年12月15日

国立市教育委員会
 教育長   石井 昌浩 様
 教育委員長 重野 和夫 様

子どもの発言を守る2000年国立2小卒業生保護者有志の会
子どもの発言を守る2000年国立2小卒業生保護者を支援する会

2小卒業式実施報告書及び中間報告を見直し、
あらためて審議することを求める陳情書

 4月以降、私たち2小卒業生保護者は学校における子どもの人権が今後どのように守られていくのか大変な危機感を持ってまいりました。というのも、2小卒業式実施報告書によって子ども・保護者・学校が多大な不利益を受け、また、多くの人がこの報告書の問題性を指摘しているにもかかわらず、市教委は一向にその問題性と向き合おうとしていないからです。「報告書には何の問題もない。」とし、さらにその報告書をもとにその後の調査・審議は進められ、中間報告があげられ教職員の処分へと至りました。その間の市教委の対応は「教育的解決」を目指しているものとはとても保護者には見えませんでした。子どもを守ろう、子どもの側に立とうとする姿勢が見えてこなかったからです。なぜならば、発端となった報告書の「非教育的」あり方を問うことなしに、最初からことが進められたからです。

 4月末以降、報告書に対する要望書を保護者は出してきましたが、誠意ある回答が得られないまま、さらに不信は拡大しています。そして、結果的に教職員の処分という当事者である子どもたちにとっては全く教育的ではない解決を市教委が選んだことは、今の市教委の基本姿勢・今後の教育改革などに対する危惧を抱かせるに十分なものです。

 12月議会での教育長は「報告書は子どもの人権・プライバシーを侵害するものではない。」という答弁をなさっております。これは保護者の認識とは著しく異なっております。保護者は報告書の存在そのものが人権侵害ととらえ、報告書を書かせた市教委は子どもの人権を侵害していると考え、また、多くの法律家・教育学者も報告書は問題であると言っています。

 私たち保護者有志は、既に校長・市教委・産経新聞・右翼から受けた人権侵害に対し、人権救済の申し立てをしており、近日中に、弁護士会による調査が始まる予定です。報告書の撤回を求める要望書を12月8日に提出しておりますが、それを参考にし、報告書及びそれに基づき作成された中間報告のあり方について、別紙の通り、再度検討していただくことをお願いいたします。


別紙

検討していただきたい内容

【1】 報告書記載の「事実」の再検討を

 2小卒業式報告書は校長の主観による一方的な視点で書かれたものであり、他の当事者の見た事実とは違う。よって、客観的・公正な現状把握とはなりえないと保護者は訴えてきました。青法協の弁護士による調査報告によりそのことが明らかにされました。「校長の報告は概ね事実」という結論を導くため、恣意的に保護者の文章を利用した中間報告もまた事実の報告とはなりえないものと思われます。(具体的には、12月8日に提出した「あらためて国立2小卒業式実施報告書の撤回を求める要望書」の質問8〜21を参照) 「事実」を再検討した上で、2小報告書・中間報告の撤回または訂正、「くにたちの教育 復刊号」に載った、中間報告に基づくと思われる記事の撤回または訂正、報告に基づく教職員処分など、事実誤認の報告書から派生した全てのものを見なおしていただきたいと思います。

【2】 子どもの人権のとらえ方の再考を

 子どもの言葉が会話体で記載されている報告書はそれ自体が子どもの人権・プライバシーを侵害するものですが、市教委にはその認識がないようです。(12月議会での答弁)子どもの言葉が本人・保護者への確認・承認なしに書かれ、公文書になるということは子どものプライバシー・意見表明権・内心の自由の保障がなくなることを意味します。このことは、人権を専門に研究する多くの人々が指摘しています。現実問題として、このような報告書が正当化されると、子どもが安心して学校でものを言うことも、保護者として学校を信頼して子どもを託すことも、できなくなります。両論併記の対象には当たらないという見解を市教委は出しましたが、書式の規程云々より前に、子どもにとっての最善の利益を優先させるべきではないでしょうか。2小報告書が起こした事態を振り返り、報告書が子どもの人権を本当に保障していたかということを検討してください。

【3】 情報公開にあたっての人権意識の確立を

 後に非開示となった2小卒業式報告書ですが、非開示になるほど危険な報告書を無神経に開示(さらに漏洩)し、それがマスコミにより報道され、人権侵害はさらに拡大しました。そもそもこれほどの不利益を子どもにもたらす報告書は書いてはいけないという見識を、教育の場にいる人たちは持つべきだろうと思います。また、市教委にも当然そのような見識が期待されます。しかし、実際には逆に危険な報告書を書かせて開示しました。中間報告についても同様ですが、市教委は中間報告を、資料の部分を除いて全て開示しており、部分的に非開示にする(墨塗り)措置もとっていません。これは都教委とさえ大きく違います。子どもの人権を守る姿勢を本当に取っているのか検討してください。(「あらためて国立2小卒業式実施報告書の撤回を求める要望書」の質問1〜5参照)

【4】 情報漏洩疑惑の解明に向けた再検討を

 2小卒業式報告書が作成されただけでも問題ですが、さらにそれがマスコミに漏洩されたことにより、大きく事件化されましたが、その責任の所在は未だに曖昧です。市教委には、自主的・積極的に調査しようという姿勢が見られません。このままですと、市教委に対する不信はいっそう高まり、今後も保護者と学校(保護者と市教委)の信頼関係の回復は困難になります。作成・管理の点から報告書には問題があったことを念頭に、漏洩疑惑の解明について検討してください。

【5】 当事者である保護者の申し出を真摯に受け止めるべき

 最終報告の前に保護者と面談するという話を以前聞いていましたし、保護者からも申し入れてありますが、2小卒業式に関して最終報告で言及するのであれば、当事者の保護者との話し合いは必要かと思います。中間報告にはあたかも保護者が聞き取りを拒否したかのようにありますが、2小卒業式報告書をベースにした話には応じられないと要望書に書き、「卒業式の後のできごと」を添付したのであって、それを勝手な解釈で引用されたことは大変心外です。よって、最終報告にはそのようなことのないよう保護者との面談について、あり方も含めてを検討してください。

【6】 学習権の保障とは何か

 学校において子どもの学ぶ権利を守ることを最優先させると市教委は強調しています。子どもの人権を問うときになぜ「学習権」のみが取り出され優先されるべきことと考えられるのか分りません。生きる権利・安心して生活する権利・意見を表明する権利・信頼関係をつくる権利・内心の自由などが保障されてこそ子どもは成長・発達でき、学校での学習権の保障された上で成り立つものだと考えます。  しかしながら、報告書が書かれたことにより、これらの権利の保障が崩されたと私たちは思っています。4月以降、右翼による学習活動の妨害や脅迫状により安心して学校に通えなくなるという状況がありました。これこそが、学習権の侵害ではないでしょうか。また、子どもが安心して自分の考えを言える保障がなくなった場所で教師と信頼関係をつくって真に学ぶことができるでしょうか。また、教職員が子どもとゆっくり向き合う時間を、脅迫状が来たことによる一斉下校指導や聞き取り調査により、奪われたことは学習権の侵害には当たらないのでしょうか。学習権についてのお考えをお聞かせください。


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