2000年12月8日
国立市教育委員会
 教育長   石井昌浩 様
 教育委員長 重野和夫 様

子どもの発言を守る2000年国立2小卒業生保護者有志の会
子どもの発言を守る2000年国立2小保護者を支援する会

あらためて「国立2小卒業式実施報告書」の
撤回を求める要望書

  昨年来、国立市の教育に対して外部からのさまざまな干渉や圧力があり、国立市教育委員会の姿勢が問われる事態となりました。しかしながら、市教委は市民の信頼を裏切り、「国立2小卒業式実施報告書」を作成し、それを産経新聞に情報漏洩することにより、いっそうの混乱をまねきました。そして、その後の市教委の対応は、本来教育の現場を守るべき立場であるにもかかわらず、最も尊重されるべき子ども・保護者・教職員の声を軽視し、「教育的解決」には程遠いものでした。

 教育の現場における子どもたちの最善の利益を考え、日々、教育活動に従事してきたと思われる2小の教職員に対して、それを支援すべき市教委が政治的圧力に屈し、または自らその流れに乗り、教職員の処分者を出すという「政治的解決」を選んだことを遺憾に思います。

 教職員の処分を出したことは子どもたちの受けてきた教育を否定し、これまで築いてきた教職員と子ども・保護者の信頼関係を壊すものです。市教委は「子どもたちには問題はない」と言いながらも、結局は子どもに応分の責任を負わせるという、当事者である2小卒業生にとっては何の教育的解決にもならない結果を招きました。

 子どもの「学ぶ権利」が学校で最優先されるべきと主張する市教委ですが、生きる権利・安心して生活する権利・意見を表明する権利・信頼関係をつくる権利・内心の自由などが保障されてこそ、子どもは成長・発達できると考えます。市教委は、長年培われてきた国立の教育の意味を深く問い直すことなしに、安易に文部省・財界などが推進する「教育改革」の流れにのっているように思えます。「卒業式実施報告書」と、それが引き起こした事態を見れば、学習権のみならず人権の保障よりこのような「教育改革」を優先させていることは明白であると思われます。

 さらに、先日の12月議会の市教委の答弁では、私たちが再三多くの問題性を指摘し、撤回を求めている「卒業式実施報告書」について、「何の問題もない」と断定しています。また、「体罰などの事故報告書ではないので、両論併記の対象には相当しない」とも述べています。これでは保護者として今後安心して子どもを学校に託すことができません。また、このような人権感覚のもとに進められる教育改革には強い危惧を覚えざるをえません。

 さまざまな理由で不当性の明らかな「卒業式実施報告書」に基づいて作成され、「はじめに結論ありき」の「中間報告書」も当然ながら事実誤認に基づく恣意的なものです。

 私たちは、「卒業式実施報告書」以降の市教委の対応に強く抗議するとともに、以下のことを要望します。

1) 「卒業式実施報告書」と「中間報告」を撤回してください。
2) 弁護士による子ども・保護者・教職員からの聞き取り調査報告書を添付しました。この報告書では、卒業式の後のできごとの事実が詳細な調査により明らかにされ、子ども・保護者・教職員の言動には問題がなく、産経新聞の報道は事実を歪曲するものであるとういことがあらためて確認されました。この聞き取り報告書をお読みいただき、卒業式の後のできごとを発端とした処分・教育改革などの一連の市教委の対応を見なおしてください。
3) 今月中に出されると言われている最終報告には、保護者の声を反映してください。
4) 全戸配布された「くにたちの教育 復刊号」の「平成11年度国立市立第二小学校卒業式について」の不正確かつ誤解を招く記述について、次号の「くにたちの教育」にて訂正し、保護者の意見を反映してください。
5) 別紙の質問に12月15日までにお答え下さい。回答は文書でいただき、要望書と回答について話し合う面会の場を設けていただきたいと思います。


 
 別 紙 

**「中間報告」に関する30の疑問**

 市教委は当事者に何の確認も説明もなく、「中間報告」を作成し、教育委員会定例会で報告し、翌日に東京都多摩教育事務所へ提出しました。市教委は「中間報告」を当事者に見せることを拒否し続けたため、保護者は内容を把握することも、疑義をとなえることもできませんでしたが、10月末の開示によりようやく読むことができました。そこで、数々の疑問がさらに出てきましたので、以下、質問いたします。  

■ 情報開示に関する疑問

1) 6月20日の教育委員会定例会では「中間報告」の多くの部分が持田浩志学校指導課課長によって読み上げられましたが、数日後には非開示決定をした文書を、なぜ公開の場で読み上げているのですか。

2) 教職員の処分決定までは「開示することにより調査に著しい支障が生じるおそれがあるため」を理由に「中間報告」は非開示にされていましたが、この時点において、開示しても「人の生命・身体の保護に支障が生じるおそれはない」と市教委が判断していた根拠は何ですか。

3) 教職員の処分決定後に、非開示理由が「人の生命・身体の保護のため」に変わったということは、処分決定後に「人の生命・身体」が危険になったということで解釈してよろしいのでしょうか。

4) 都教育庁は10月30日の時点で、「中間報告」の一部を非開示にしています。この判断は、児童の発言内容などを開示すると安全確保に支障が生じるおそれがあるという理由からです。一方、市教委は9月28日の教育委員会で「中間報告」を開示する方針に決めています。市教委がこの時点において、「人の生命・身体」の危険はなく、がもう安全であると判断した根拠は何ですか。

5) 12月1日発売の『正論』(産経新聞社)に都が非開示にしている部分も含めて、「中間報告」が掲載されています。<守秘義務に違反するので「中間報告」の漏えいはありえない>ということであれば、掲載されているのは市教委が開示したものであるはずです。都が子ども達の安全確保を理由に非開示にしている部分をも市教委が開示し、それが今まで事実を歪曲した扇動的な報道を続けてきた『正論』(産経新聞社)に掲載されたことをどう考えますか。

 

■ 文書の性格などについての疑問

6) いわゆる「中間報告」は、<「平成11年度国立第二小学校卒業式」について(中間報告)>というのが正式な文書名なので、年内にまとめられる「最終報告」は卒業式についての最終報告であると解釈してよろしいでしょうか。

7) 石井昌浩教育長によれば、「中間報告」は教育委員会事務局から教育委員への報告であるとされています。また、6月20日の教育委員会定例会にて、「中間報告」の内容は認められない旨、発言した委員もいたということは、「中間報告」に記載されている文書作成者である「国立市教育委員会」とは、教育委員会事務局のことであると解釈してよろしいのでしょうか。

8) 市教委事務局が「中間報告」を作成した翌日の6月21日、2小校長は服務事故報告書を市教委に提出しています。そして、石井昌浩教育長は、6月28日に教職員の服務上の事故について都教委の「対処をお願い」する報告書を都に提出しています。なぜ、校長の報告を待たずに「中間報告」をまとめ提出し、また、なぜ1週間あまりの間に2回も都に報告書をあげているのでしょうか。何か急がなければならない事情があったのでしょうか。

9) 市教委によれば、2小卒業式の後のできごとについては、体罰などの事故報告書とは違うので両論併記の対象ではないとのことです。しかし、体罰の他にも、校長の所見だけでは、正確な事実が把握できない場合は多々ありうるはずです。市教委が両論併記の対象とするのはどのような場合なのですか。また、市教委が両論併記の報告書を作成した前例はありますか。

 

■ 「中間報告」に書かれていないこと多数あることについての疑問

10) 「中間報告」では、校長報告書についての調査結果が書かれていますが、保護者が再三にわたり校長報告書の撤回・非開示を口頭でも文書でも求めてきたことが書かれていないのはなぜですか。

11) 「中間報告」にはあたかも保護者が聞き取り調査を拒否したかのように書かれていますが、校長報告書には問題があると思っているので校長報告書に基づいた聞き取りには応じられないという保護者の意思が書かれていないのはなぜですか。

12) 「中間報告」で引用されている「卒業式の後のできごと」は、保護者の要望書の一部です。なぜ要望の部分は全く書かれておらず、切り離して「卒業式のあとのできごと」の部分だけを引用・利用しているのですか。

参考:保護者が6月2日提出した要望書より

【2】4月25日の教育委員会定例会では、この報告書を前提として補足するために聞き取り調査をし、保護者にも事情を聞きたいということでしたが、私たちは報告書そのものの無効・撤回を求めているので、報告書に基づいた調査に応じることはできません。 私たちがあの出来事をどのように見たかを別紙にまとめましたので、校長先生の報告と、保護者から見た真実を照らし合わせ、公正な立場から事実を認識し、審議してください。

13) 「中間報告」の8ページでは、保護者の提出した「卒業式の後のできごと」を引用して、『「そのあと、〜(略)〜ひとりの先生が、子どもたちの言いたかったことをまとめて、校長先生に「子どもたちにあやまってください」と言った。」』と記述されています。この引用で、市教委が「〜(略)〜」としている部分は、もとの文(「卒業式の後のできごと」)では、「長い話し合いに区切りをつけるために」と書いています。この「中間報告」は、非常に引用や重複が多いにもかかわらず、なぜこの部分ではわずか17文字の字句が省略されているのですか。教職員が「興奮して校長に詰め寄る子どもたち」をなだめることもなく、むしろ校長を責めたてたというイメージを補強するためですか。p 14) 職員会議の内容や国旗掲揚に関わる校長判断を児童は知ってはならない旨、記載されていますが、2小校長自身が、児童に説明することを認めていたということはなぜ「中間報告」に記載されていないのですか。

15) 「中間報告」の2ページには、警察への警備依頼や市教委職員の派遣によって、「児童・生徒の安全確保や混乱回避のための万全の措置を期した」と書かれています。しかし、市教委職員は、卒業式・入学式での、行事妨害や子どもたちへの人権侵害行為を黙認・放置し、その後の対応も何もせず、教育にたずさわる公務員としての信用を著しく失墜させたと、私たちは認識しています。この点について市教委が把握している事実を教えてください。また、いまだによく分からないのですが、市教委職員が来ていた目的は何だったのでしょうか。職員派遣の目的は、教職員を監視し、国旗を円滑に掲揚することであり、その「職務」だけに専念していたために、行事妨害や人権侵害を黙認・放置してしまったのでしょうか。p 16) 「中間報告」には、卒業式以降の経緯も詳細に記載されているにもかかわらず、愛国党による行事妨害・差別発言、60台あまりの街宣車デモ、脅迫状などの事実と、そのことが子どもたちに及ぼした影響などについては、なぜ書かれていないのでしょうか。

 

■ 「中間報告」の結論や事実認定などについての疑問

17) 「中間報告」の16ページによれば、『質問をした8人のうち7人の回答が「学習指導要領には法的拘束力がある。」という明確なものでなかった。〜(中略)〜回答から、国立第二小学校においては、学習指導要領に基づいた教育課程の編成、実施ができていないことは問題である。』と断定されています。なぜわずか7人の回答から、学校全体のことについて結論付けられるのですか。また、法的拘束力を認識していないと、適切な教育課程の編成・実施はできないのですか。

18) 『児童・保護者、職員の発言の多くは、校長に対して、「国旗掲揚についての事前説明」を行うことを主張している。』と書かれていますが、私たちはそのような事実はなかったと認識しています。保護者がそのような主張をしたという根拠は何ですか。

19) 『「〜その"説明をしないで揚げた"ことに対して怒っているのだから〜」という記述からも、「長い時間堂々巡りが続く。」中、校長が、報告書に「子供たちが興奮状態になり、~」と記述した事実が把握できた。』と、「卒業式の後のできごと」を引用していますが、なぜそのように読み取り、結論付けることができるのかよく分からないので、説明してください。

20) 「報告書にある〜(中略)〜児童の発言は担任のこの指導が大きく影響していると考えられる」と18ページに書かれていますが、国立市教育委員会は産経新聞と同じように、「子どもには主体的に考える能力はなく、教師に扇動されたのだ」という認識を持っているのでしょうか。

21) P19の(5)の3段落目に書いてあることの意味がよく分かりません。「今回の卒業式後の場面においては、校長は学習指導要領にのっとって国旗を揚げたのだから、児童への説明などする必要はなかった」という意味なのでしょうか。

22) 『校長は「つらい思いをさせて悪かった」と謝罪したことは、国旗を掲揚したことによって傷ついたということに対して謝罪したのではなく、「本来、国旗・国歌の指導が適切に行われていれば、子どもたちが、このようなつらい思いをしなくても済んだという気持ち」であり、「これまでの学校の指導のいたらなさを謝った」と言うことであった。』と13ページに書かれています。しかし、その場にいた子ども・保護者・教職員で校長がそのような意味で謝ったととらえた人はほとんどいないと思われます。また、中間報告が出されるまで、校長がそのような説明を保護者にしたことはありません。いったいこの記述の根拠は何ですか。

23) 「中間報告」では、卒業式の後のできごとについて、概ね校長報告書の通りであると結論付けていますが、保護者の認識とはやはり大きなずれがあります。資料として添付した弁護士による「聞き取り調査報告書」も熟読・検討いただき、あらためて市教委の見解を伺いたいと思います。

 

■ その他の疑問

24) 「中間報告」には、「自国の国旗・国歌を尊重する態度を養い、それを通して、他の国々の国旗・国歌も尊重する態度を身につけ、国際社会において信頼され、尊重される日本人を育成することが大切」と書かれており、また、服務事故報告には、「国旗掲揚を万国旗にすべきであるなどの発言から、教育公務員としてのよりどころである法令等に則った話し合いが行われていなかった。」とも書かれています。このような記述から察すると、市教委は<学校教育とは「日本人」だけを育成するためのところだ>とお考えなのでしょうか。そのような理由から、入学式などで、市教委職員や学校管理職は、「日本人」ではない児童、「外国籍」の児童に対する差別発言は黙認したのでしょうか。

25) 「校長が判断した内容について、教職員は従う義務」「思想・信条にかかわらず学習指導要領あるいは校長の指示や命令に従って教育、指導を行う職務上の責務」などと書かれていますが、校長が誤った判断をした場合はどうなるのでしょうか。

26) <卒業式での子どもの決意表明は、事前に教職員が把握する必要があり、教職員が事前チェックした内容と異なることを、卒業式で子どもが言ってしまった場合は事後の「指導」を加えなければならない>との旨、記載されていますが、それははなぜですか。

27) なぜピースリボンをつけることが全精神を職務に集中することの妨げとなるのでしょうか。ピースリボンをつけたことで、具体的にどのように卒業式の進行に支障が出たのかを教えてください。

28) なぜ「職員会議における校長と職員の対立の様子や国旗掲揚に関わる校長判断について、児童が知っていたことは、あってはならないこと」なのですか。また、「(職員会議の内容や様子を児童に知らせること)このようなことはあってはならない」という校長所見についてどう考えますか。

29) 1990年市議会予算特別委員会での「卒業・入学式における日の丸掲揚、君が代斉唱の強行のとりやめを求める付帯決議」付帯決議は単年度主義だという市教委の見解の根拠は何ですか。また、そのような見解は初めて聞いたような気がしますが、今までに市教委はそのような見解をいつどこで示しましたか。

30) 「中間報告」の5ページによれば、『5月8日(月) 「聞き取り調査が遅れていることに対して東京都教育庁指導部及び多摩教育事務所より、国立市教育委員会教育長の承諾を得て国立市教育委員会学校指導課長の同席のもとに、関係教職員から直接事情を聴き取りたいとの連絡があった。」5月12日(金) 「聞き取り作業にあたって職員の派遣を依頼した。」』とのことです。持田浩志学校指導課長は、教育委員会定例会の場で、記録及び記録の整理のために、都の職員の派遣を依頼したとも発言していますが、一方、都教育庁は市教委とともに聞き取り調査をしたとも表明しています。結局、市教委が都の職員派遣を依頼した目的は何だったのですか。

 
 以上、30の質問です。よろしくお願いします。

 


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