☆━━━━━━━━━━━━━━━━「西暦」2000年8月21日発行━━
 ◆「日の丸・君が代」はいらない! くにたち・一橋ニュース第21号◆
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◎◎《国立2小教職員からのアピール!!》◎◎

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 このアピールは、国旗・国歌法成立から一周年、そして処分決定の前日でもあった8月9日、国立で行われた集会でのものです。
 「土下座要求」報道があった4月5日以降、教職員は日々の対応に追われ、また、一方的な産経報道や、市教委・都教委の圧力の中で、なかなか外へ向かってアピールしていくことが難しい状況にありました。この間、教職員が何を考え、どのように動いてきたのか、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思い、メールニュースで送ることにしました。
 【その1】の部分は、以前にメールニュース20号などですみたにが書いたものと重複する部分が多いのですが、【その2】の部分は、処分のもととなった市教委・都教委からの「聞き取り調査」について、教員の立場から記述されています。全部で8000字近くの文章で少々長いので、お時間のない方は【その2】からでもぜひお読みください。
 なお、すみたにの責任で小見出しをつけさせていただきました。



■■国立2小教職員からのアピール 【その1】■■


 産経新聞等による4月5日の報道から始まる国立二小や、国立の教育への不当なキャンペーン・組合攻撃に対し、都教組・多摩教組・東学・アイム89の二小分会から正確な状況を把握してもらうために経過報告とアピールをしたいと思います。

●卒業式に至るまでの国立の状況

 99年の3月以降、学校の卒・入学式に「日の丸・君が代」のない国立市に対し、それを許さない「日の丸・君が代」推進派の活動は活発になってきました。そして、「国旗・国歌法」をむりやり制定した後はそれが顕著になり、国立の教育に対して大きな圧力をかけるようになりました。「日本時事評論」(山□県本社)や市民団体を装う他の団体が各家庭にビラ配付をし、卒・入学式に「日の丸・君が代」のないのは組合や反対する市民グループのためであるとのキャンペーンを張っていったのです。そして、それに後押しされるかのように、小・中学校の校長会も「日の丸・君が代」実施にむけて市教育委員会への働きかけを強めていきました。

●卒業式前日の話し合い

 各学校での議論もそうした状況を受けて、例年にない厳しいものとなりました。二小においても、3月22日の「屋上に国旗を掲げる」という校長提案に対し、23日に長時間議論しました。「教職員・保護者の意見を大切にし、強行しないでほしい。」、「警察や市教委の協力を得てまで、『日の丸』をあげることにどんな意味があるのか。」、「卒業式に向けて、子どもたちは一生懸命やってきた。主人公である子どもたちの気持ちを大切にしてほしい。」等々私たちは校長に訴えました。また、「どうしても実施しなければならないのなら、せめて保護者や子どもたちに説明してからでも遅くない」、「明日の朝、再度話し合うことにしてはどうか。」といったことも主張しました。
 しかし、校長は「国旗を尊重する態度を養うためにも、実施したい。」、「長時間話し合ったのだから、明朝は話し合わない。」など、姿勢を変えることはありませんでした。
 その日は、「明朝7時に、校長が私たちの質問事項に校舎の外で答える。」ということを確認し終了しました。7時半から「日の丸」を揚げ、それを妨げられないようにするために、そうした時間や場所の設定をしたのです。

●そして、卒業式当日…

 24日、当日の朝、雨が降る中、傘をさしながら、東門の外で質疑応答をしました。途中で市の職員やパトカーが来て、異常な雰囲気の中でそれが続けられました。しかし、校長からは質問の意図に明確に応える回答がないまま、打ち切られてしまいました。そして、校長・教頭や市の職員は校舎の中に入り、私たちが中に入れないように内側から鍵を掛けました。その後、屋上のポールに「日の丸」が掲げられました。私たちは、それが終わって、ようやく校舎の中に入れたのです。私たちは、「日の丸」をはやく降ろしてほしいと校長に伝えましたが、いつ降ろすかなど即答しませんでした。
 二小では、例年、学校行事の前(運動会・学芸会・卒業式など)に子どもたちを集めて教職員が「今までの練習の成果を精一杯生かそう。」と励ましたり、最終の連絡をしたりします。今回の卒業式でも同様でした。その際、子どもから屋上の「日の丸」が掲げられていることに対する質問が出たので、校長の最終判断で掲げられたことを伝えました。卒業式は整然と行われ、5・6年生が話し合って作り上げた「呼びかけ」や練習を積み重ねた合唱など、とても素晴らしく心に残るものとなりました。

●後に「事件化」される「卒業式の《後》のできごと」…

 卒業式も無事終了し、校庭での記念撮影、門出の会と続き、子どもたちを門まで見送りました。その後、まだ帰らずにいた卒業生何人かが校庭から校舎内にもどろうとする校長のところへいき、「どうして、今年から旗をあげたのですか。」などの質問を始めました。
 次第に子どもたちの数は増えてはいったものの、静かにやりとりが続いていたので、私たち教職員や何人かの保護者も見ている位置は異なっていましたが、周りで見守るような状況でした。それに、校長も前日の職員会議で「卒業式前は説明しないが、終わった後なら質問などあればそれに応えてもよい。」といった趣旨の発言をしていましたので、私たちには校長が子どもたちに説明をしているのだと思いました。校長は子どもたちの質問や意見に対して、「指導要領で決められている。」ということを中心に答えていました。
 やがて、子どもたちから「卒業式も終わったんだから、降ろしてください。」という発言が出始めました。校長は、卒業式も終わったので降ろしてもいいという自らの判断で、屋上に向かいました。子どもたちも後からついていきました。こうした様子を見守っていた教職員や保護者は校庭から屋上の様子を見たりしていました。
 「日の丸」が降ろされた後、何人かの子どもたちは帰っていきましたが、残りの子どもたちがなかなかもどってこないので、心配になった教職員の何人かが屋上に見に行きました。そこでは、子どもたちと校長とのやりとりが続いていました。「どうして、事前に説明してくれなかったのか。」、「やる前に説明もなく、自分たちの気持ちを傷つけたことについてあやまってほしい。」といった子どもたちの質問や意見に、校長からは、十分な答は得られませんでした。
 しかし、その後に校長は「最後にいやな思いをさせて悪かった。」と発言しました。この後も話し合いは続くのですが、心配した保護者が上がってきたし、午後2時を過ぎていたこともあり、教職員が終わることを促し終了しました。

●産経報道と校長の報告書―「土下座要求事件」へ…

 これが、国立二小の卒業式前後のおおよその状況です。ところが、入学式の前日、4 月5日の産経新聞には、「児童30人、国旗降ろさせる」、「校長に土下座要求」というスキャンダラスな見出しで扱われました。私たち教職員は、そのことや、「平成11年度卒業式実施報告書」が校長によって春休み中の3月28日に市教委に提出されたことなどを、午後の職員会議の中で知ることになりました。
 そして、その記事の内容が情報開示もされていない「卒業式実施報告書」をもとに書かれているとしか思えないことに憤りと強い疑念が生まれました。また、「卒業式実施報告書」には、子どもとのやりとりが会話の形式で文章化されており、人権上問題があること、春休み中に作成されたため、教職員との事実確認が十分行われていないことなど多くの問題がありました。
 そして、「卒業式実施報告書」をやむを得ず情報開示する場合には、子どもとのやりとりの部分については開示しないよう市教委に申し入れること、産経新聞に対し事実とかけはなれた報道に抗議し、今後の二小の教育活動に大きな支障をきたすので訂正を求めていくことなどを確認し、校長を通じてそれぞれに働きかけてもらうようにしました。

●右翼の抗議や脅し

 4月6日は始業式のときから、愛国党の人たちが来てスピーカーで演説したり「君が代」を流したりしました。また、「日の丸・君が代に反対する教師はリストラせよ」などののぼりを立てていました。これらに対し、市の職員もその場にいたのですが、有効な手だてをとってはくれませんでした。また、始業式が終了し下校する子どもたちに対し、愛国党の人たちは威嚇するような言動をしました。
 5日、6日の朝と協議を重ねたのですが、校長と教職員との考えは平行線のままで卒業式のときと同じように、入学式には屋上に「日の丸」が掲げらてしまいました。

 5日から、学校には抗議の電話やハガキ・封書、ファックスなどが来るようになりました。抗議の電話の数はすさまじいものがありました。

●子ども・保護者の不安解消のために連日の話し合い

 その後、私たちは「卒業式実施報告書」の問題、マスコミに一方的に報道されてしまったことや始業式・入学式での愛国党の妨害などによる保護者の不安をどう解消するかを中心に話し合いを連日のように重ねました。その話し合いに入った矢先に校長が体調を崩し、休暇を長期にとることになりました。
 そうした中で、各学年の保護者会を迎えました。その中では、
  • 新聞報道は、事実確認は不十分で、学校として困惑している。
  • 卒業式は温かい雰囲気で終了した。
  • 卒業式後、子どもたちが自発的に なぜ説明もなく国旗をあげたのですかと質問してきた。
  • 校長は子どもたちの要求があったからではなく、自分の判断で国旗を降ろした。
  • 子どもたちは、時には感情的に話すこともあったが、おおむねていねいな言葉で話をしていた。
  • 子どもたちに不安を与えたり、教育活動の妨害をするような外部からの行為には、市教委や警察と連絡を取り対処する。
などのことを教頭の方から保護者に伝えてもらい、学校として卒業生の人権を守り、保護者が卒業式後のできごとをできるだけ正確に把握し不安を取り除くことに努めました。

●事実をねじ曲げた《政治的》なマスコミ報道

 こであらためて、4月5日から始まる産経新聞を中心とするマスコミ報道の問題点や特徴に触れておきます。それは「教育問題」に見せかけながら「政治問題」にしようとしていることにあります。「教育問題」として論じるなら、なぜ、卒業式後にこのような問題が起こったかをあらゆる角度から徹底的に検証すべきです。そして、教育現場が今どうなっているかを調査するのが普通だと思います。ところが実際は校長の作成した「卒業式実施報告書」の内容をうのみにしています。そればかりか、そこに書かれている子どもの発言をほぼそのまま引用するという人権を無視した方法をとっています。
 そして、何よりも政治的だと思われるのは、入学式の前日に二小の卒業式後のできごとを「児童30人、国旗降ろさせる」、「校長に土下座要求」の見出しで出していることです。事実を知らなければ、この報道を見た人は30人の子どもたちが校長に強い圧力かけて「日の丸」を降ろさせ、果てには校長に土下座を要求したものと考えます。しかし、実際にはそんなことはない静かな話し合いだったのです。校長自身も「土下座」という言葉は一度くらいしか聞いていないと言っていますし、ましてや「土下座要求」などということとはなかったのです。
 その後も、産経新聞による報道は続き、4月13日には全国版の中でも「土下座要求」、「子どものやることではない」との見出しをつけ論じています。そして、「国旗・国歌法」が徹底されないのは、教職員組合が反対し、子どもたちに偏向した教育を行い煽っているからだという結論を導くのです。
 これらは、子どもたちの意思決定や意見表明を認めない人権無視の論理であり、戦前の「教育観」や「道徳観」と軌を一にするものだと思います。
 そうした報道の結果、抗議の電話はもとより4月26日には「日の丸・君が代」を賛美するグループの街宣車約70台が国立市内を車両デモし、教育活動に支障をきたし市民や保護者にも多大な苦痛をもたらしました。また、その後の脅迫文にもつながっていきます。
 産経新聞は、さらに教職員組合への攻撃や市教委や市政への批判というように国立そのものをターゲットにしていきます。こうしたことからも決して「教育問題」として論じるのではなく教職員への処分を出させ国立市の「教育の正常化」・「市政の正常化」の世論を作り「政治問題」として決着させていくのだという姿勢が明確だと思います。



■■国立2小教職員からのアピール 【その2】■■


●市教委や都教委の姿勢

 こうしたマスコミによる世論作りの一方で市教育委員会や都教育委員会の姿勢がどのようなものだったかも報告しておきたいと思います。
 市教委がなぜ校長に卒業式後の問題を「卒業式実施報告書」の中に盛り込ませたのか、しかも会話文の形式をとらせたのかは大きな問題として残ります。これは、市教委の人権感覚も問われるところだと思います。しかも、それが、情報開示もされていないうちになぜマスコミに流れてしまったのか、これは情報管理の問題として問われるところですが、今もってこの問題に明確な回答がありません。

●処分を前提(?)の教職員への「ヒアリング」

 市教委は二小の問題を「政治的な問題」にせず、「教育的な問題」・「教育的な議論にしていく」ということや事実を正確に把握するという姿勢を当初は持っていました。そして、教職員からのヒアリングを提起してきました。私たちは、一方的に曲解されたマスコミ報道や校長の作成した「卒業式実施報告書」が独り歩きすることは防ぎたいと思っていたので、その方法などに疑問を持ちつつも私たちの事実をぶつけるためにヒアリングに応じることにしました。
 しかし、4月21日に実際にヒアリングが開始されると、それは校長の作成した「卒業式実施報告書」に書かれていることをもとにした質問が中心で、私たちが意見を十分に言えるものではありませんでした。また、処分を前提にした「聴き取り」のようにも思えました。そのために、もう一度ヒアリングのあり方などを市教委に考え直してもらうべく、私たちの見解ををまとめ5月2日に「要望書」として提出しました。そして、それを契機に今後の進め方について、市教委と私たちが意見交換することを期待しました。

●都議会、衆議院文教委員会を経て…

 しかし、4月14日に都議会決算特別委員会、19日には衆議院文教委員会等で、二小のできごとが取り上げられたりする中、市教委に対し政治的な圧力があったのかもしれませんが、5月8日以降状況が大きく変わりました。市教委は私たちの要望に耳を傾けることなく、何が何でもヒァリングを再開するために、二小の教職員に対し教育長名で通知を出しました。私たちは、運動会を27日に控える学校の実情を考えるとヒアリングに応じることはとても厳しいし、もう少し学校の状況に合わせてほしいなどと要望しました。校長は、それをわざわざ発言者名も入れた報告書を作成し、発言要旨の確認を本人ともせず市教委に提出しました。そして、市教委も私たちの要望を受け入れませんでした。

●問題の多い「ヒアリング」

 5月17日から行われたヒアリングは、4月に行われたものとは全くちがい一人45分で同席者は認められず、記録のための人を1人認めるというものでした。私たちが要望していた方法とは大きく異なりました。さらに、異なる点は市教委のみならず都教委が記録者に入ったことでした。私たちは、市教委のヒアリングにどうして都教委が入る必要があるのか追求しましたが、記録をまとめたり多くの人数のヒアリングをするのには、都教委からの手助けが必要という以外の回答はありませんでした。また、教職員の中には指導要領の「法的拘束力」などについて見解を求められたりする人もおり、事実確認だけではない意図を感じざるをえないものとなりました。そして、異動した人も含め昨年度の嘱託員を除く二小の教職員全員にヒアリングが行われました。

●一方的な「中間報告」

 これらを受け、市教委は6月20日の教育委員会で「中間報告」を行いました。教育委員会で報告する際には文章化したものを教職員と確認することになっていたにもかかわらず、それを私たちが要求しても実現できていない状況です。また、「中間報告」は情報開示の請求も行われていますが、まだ開示の対象となっていません。私たちが子どもたちの人権を守るため、開示しないでほしいと要望した「卒業式実施報告書」は開示され、当該の私たちが知る権利をもっている「中間報告」は知らされない、こんな市教委のご都合主義が許されるわけがありません。個々人のヒアリングの内容は、そのつど確認してきたところですが、それがどうつなぎあわされているのかとても不安です。

●都教委による「聴き取り」調査と介入

 6月27日からは都教委による、聴き取りが行われました。この中では、卒業式前日の職員会議のこと、当日の朝のこと、卒業式後のことなどで中心になった人物は誰かを明らかにするためのものでした。おおよそ1人につき2時間半〜4時間に及ぶものでした。もちろん、都教委は私たちの意見を聞くというより、校長の「卒業式実施報告書」やその後作成したと思われる「事故報告書」や市教委の「中間報告」をもとに質問をしてきたのだと思います。
 その後都教委は7月に入り、国立の学校教育に対する調査と称し、小中学校全校に出向いています。教育行政が監視のために学校現場に有無を言わせず入ってくるといったやり方を、私たちは黙視することはできません。

■私たちは粘り強く頑張ります■

 国立二小では、4月5日から異常な事態が続いてきました。4月・5月は職員会議のない日はほとんどありませんでした。運動会や全校授業参観などの学校行事のときにはいろいろな妨害やマスコミに対する方策として、P・T・Aにも協力してもらい学校に来る人のチェックをしたりもしました。そして、脅迫文などのこともあり下校指導なども教職員が付き添ったり、巡回したりしながら行っています。また、組合の分会にも、脅迫文が送られてきている状況もあります。
 そんな中でも、私たちはこの二小にかけられた意図的な政治キャンペーンや「教育正常化」、子どもの人権を奪おうとする動きに職場や組合を中心に抗してきました。幸いなことに、これまで培われた二小の教育を守りたい、子どもの人権を守ろうという保護者・市民がたくさんいます。そして、それぞれが市教委などに対し、粘り強く働きかけをしています。そうした支えがあり、今日まで何とかやってこられました。

 私たちは、ただ単に二小あるいは国立にかけられた攻撃だとは思っていません。公教育全体にかけられた攻撃だと思っています。今の状況において、残念ながら都教委から処分が出されるかもしれません。しかし、そのために皆でつくり上げてきた二小や国立の教育をつぶさせてはならないと思います。そして、そのことが子どもの人権を守り、私たちひとりひとりの教職員が、これからも「自分らしさ」を失わないで教育活動を続けられることになると思うのです。
 まだまだ、長い闘いになりそうです。ときには激しく、ときにはのんびりとおおらかに、ときには一息入れながら、私たちなりの知恵を精一杯出し、私たちなりのやり方で頑張っていきたいと思います。これからもよろしくご支援ください。 
(8月9日、国立にて)

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